ほとんど耳を通していないクラシック作品を。
バルトークのピアノ協奏曲集とは、まぁ、これを購入した時の自分は相当に欲しがり欲が強かったのか、取りあえず気になったものは何でも買っておけ、だったのか。今だったら間違っても購入していない。
ともあれ中身がどのようなものであったかすら全く覚えていない作品集。まずは聴いてみないことには始まらない。このアルバムはブーレーズが全編で指揮を執り、作品ごとにピアニストとオーケストラの組み合わせ違いを楽しむと言う企画だったのですね。
まずは第1番。
ピアノは私も好き好き、クリスチャン・ツィメルマン。オケはシカゴ響。
実にアバンギャルドですね。ピアノとオケとがとにかくこれでもかこれでもかと派手に絡み合う。ピアノだけに主人公を張らせはしないぞと言わんばかりにオケが迫る。そうはさせるかとピアノも大逃亡。
これはピアノとオケとのカー・チェイスとか、ハイド&シークとか、トムとジェリーとかなのだな。
この手の頭の中が混線する系の作品、好きですね。常には聴けないけれども。20世紀に書かれた作品のわりには普通に聴けます。
第2番。ピアノはレイフ・オヴェ・アンスネス。オケはベルリン・フィル。
ピアノが持つ表現力の可能性を追求しているかのようなフレーズが多数現れます。旋律は第1番同様とにかくあちこち飛び回るのだけれども、どこか嬉々としてると言いますか、朗々としていると言いますか。
その正体は暴れん坊将軍なのだけれども、庶民の生活を謳歌しているかのように。第2楽章のシリアスさは仮面の下、ですよ。大立ち回りの第3楽章などはまさにあれのそれではないかと。
第3番。ピアノはエレーヌ・グリモー。オケはロンドン交響楽団。
表情の多面性。印象が次々に変わっていきます。ここまで聴いたバルトークのピアノ協奏曲に共通する朗らかの中に、今度は妖艶さをも加えて。これまでと異なるのはピアノを立たせるスコアになっていることかと。より「ピアノ協奏曲」らしくなっているように感じられました。多様性から普遍性への変貌とでも言いましょうか。
総じて美しさとは対極に位置している音楽かと。ただしそれはもちろん醜さではなく、北極と南極との存在のようにお互いが共にポールとしてあるかのごとくで。
20世紀が現代音楽の興隆の時期であるならば、バルトークはクラシック音楽の歴史を踏まえながら、そこに至る次の一手を模索していった作曲家なのではないかと。聴いていて吹奏楽のスコアに通じ行くユニークさも感じ取れました。
この演奏を映像で見たら相当に楽しいでしょうね。カメラワークもきっと面白いことになるでしょう。画面に見入ってしまい、曲そのものが耳に入ってこなくなるほどに。
最後の最後に気がついたことを。
上原ひろみが聴けるのであれば、バルトークのピアノ協奏曲は聴ける!
共通している要素が多数ある。上原ひろみがこれを弾いていると言われたら、自分としては非常にしっくり来るものがあります。上原ひろみがオケとの共演をすると仮定して譜面を起こしたならば、きっとこのようなテイストになるはず!