音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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KALEIDOSCOPE / 藍井エイル (2022 Spotify)

カレイドスコープ。歌もまた万華鏡。

しかしながら、個人的に厳しいことを言えば、これではない。

さらに個人的かつ具体的に語るならば、自分が藍井エイルに求めているのはもっともっとヒロイックな楽曲やボーカルなのだ。

藍井エイルが声優的歌唱、七色の声であること、を模する必要は何もない。それは一ファンとしての思考の既得権に縛られているだけなのだろうか。楽曲としての万華鏡であらば、それはもちろん諸手を挙げて喜ぶことではあるが。歌唱において何者かになろうとする必要は最早ないと思うのだ。藍井エイルは藍井エイルでよいはず。

それともステレオタイプな藍井エイル像を、藍井エイルに一方的に押しつけているだけなのだろうか。事実、そうである楽曲における、水を得た魚であるかのごとく強く高らかに歌い上げるボーリゼーションがそれを証明しているようにも思える。アルバム後半の流れなどは非常に据わりのよいものに感じられ、tr.11に至ってはその藍井エイル像を藍井エイル自身が打ち破った結晶であるように感じ取れたのだ。絶望を打ち破るかのような力強さ、対比を表現したその姿こそが。

万華鏡に詰めた石の色加減を誤ってしまったか。もったいない。引き出しを増やそうとするのであれば、その方法にはまた別の道があるだろうに。そう惜しむ気持ちで一杯になる。

KALEIDOSCOPE (通常盤) (特典なし)