音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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龍凰童子 / 陰陽座 (2023 48/24)

陰陽座の新譜が出るとは全くもってノーマークだった。前作、2018年リリースのアルバム『覇道明王』をリアルタイム聴いて「これは格好いい!」と叫んだものの、その後再生回数を稼いでいなかったのだよね。最大瞬間風速だけでその後が続かなかった。

そう思いながら今作をSpotifyで試聴がてら聴いてみると、いやはや、滅茶苦茶自分好みじゃないですか。どうしてこのバンドの音源を今の今まで放っておいた。速攻で24bitハイレゾ版を購入。今に至る。

「妖怪ヘヴィメタル」と言うのがこのバンドのコンセプトらしいのだけれども、そう言った二次元的コンセプトは抜きにして、そこにある音楽のみで勝負されても十二分に自分に響く。

音楽としては非常に明快なHR/HM。そこに抜けのすさまじくよい女性ボーカルとアクセントとなる男性ボーカルとのカラフルなツインボーカル、そしてツインギターとの音の厚さとスケールの大きさで迫ってくるのだから、これを自分が好まないはずがない。

最初の最初だけ「これでもっと低音の圧があれば」とねだったものの、聴き進めていくうちに、それを行ってしまうと前述のこのバンドを格好いいと思わせる要素がマスクされてしまうことにも気がついた。

とにかく音の抜けがバンドとしての疾走感とヘヴィネス、輝かしい黒さと言ってもいい、とを両立させるための音作りになっているのだと。演奏もサウンドも余計なことは一切していない、それでいてゴシックかつブライトに音が現れている。それだけでも十分。

歌詞、すなわちバンドとしての世界観は自分にとっては二の次でよいのです。出音がどれだけ自分にとって響くか否か。圧倒的に前者。一聴して音がストンと耳と腹に落ちる感覚が素晴らしい。

71分超えの大ボリュームなアルバムの中身だというのに、その重さを全く感じさせない勢いも素敵すぎる。あっという間に最後まで駆け抜け、しかもその聴了感が腹八分目。もう一回聴こう、と言う気にさせられるところも素晴らしい。バンドしての構成力がないと、長尺は重いだけのものになってしまいがちだから。

総じて好印象の極み。勢いに任せて16枚組ボックセット『廿魂大全』を全部借りました。例によって果たして全部聴ききれるのかどうかは別として、これは順次紐解いていかないともったいないような気がしてならないのです。しっかりと聴いておきたいと思った次第。

とりあえずは頭の悪い文章でファーストインプレッションのお茶を濁したいところ。これはもっとじっくりと聴かないと全貌が見えてこない。相当に深いですな。

龍凰童子