音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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犬は吠えるがキャラバンは進む / 小沢健二 (1993/2021 44.1/16)

Flipper's Guitarからのソロデビュー1作目がこの調子のアルバムだった(そして2ndがあの超ハッピーな『Life』だった)ことを考えると、やはりこの作品は相当に異端ですね。サブスクには向かない旨の発言を本人がしていることを考慮してもね。本当に内省的であり写実的でもあり湿度が高い。体温も高いけれども。

確かにこのアルバムはもはや単体ではなかなか切り出しにくいものはあるな。それぞれの曲がお互いを支え合っているかのような流れの妙。シングル曲や、その後新たに切り出された曲はあるけれども。

私はこのアルバムは大好物です。日本のポップ、J-POPが誇る、ある形における頂点に立つ作品だと思っています。日本人の感性、いや、日本語が持つ感性を当時の小沢健二なりに突き詰めた作品だったのだろうと。まぁ、それも過去に何度も何度も同じようなことを書いているけれども。

しかしこの純度の高さはどこからやって来るのだろうか。30年前の小沢健二が持っていた音楽への純度の高さの表れなのだろうか。30年の年月を経た今でも何も褪せないところもまたその表れなのだろうか。日々の繰り返しがループな閉塞であるかのように感じられる年代特有の、それを突き破りたいと願うマグマのような動力を音楽として表現するとこのようなものになるのだろうか。またそこから結局は抜け出せないのだと気がつく年代でもある、その諦念との混合体なのだろうか。

考えるととりとめもなくそしてとどまりませんね。そんな作品。

犬は吠えるがキャラバンは進む (完全生産限定盤)(2枚組)