本稿は「ステレオサウンドによる一連のTM NETWORK作品SACD化記念、印象が新鮮な今のうちにその特徴と感想を詳らかにしておこう」といった主旨の企画です。
オリジナル作品のリリース順に記していこうと考えております。
なお、全作品(該当がないものを除く)、発売当時のCD、リマスタCD、ハイレゾ音源を、そのメディアの変遷と共に歳を重ね、聴いてきた人間が書いています。
続いては『Self Control』。一言で表わすならば「本領を発揮したTM NETWORKの当時の勢いを、余すことなくパッケージすることに成功したSACD化」となるでしょうか。
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1987年作品。この年、TM NETWORKは精力的に2枚のオリジナルアルバムをリリースする。その1枚目が本作。
前作『GORILLA』のSACD化ではややすると当時の録音技術の限界などに影響されただろう線の細さがわずかに残っていたものの、本作においては現代の再生機器で聴く上でも違和感のない、骨格のはっきりしたサウンドを味わうことが出来る。
オープニング「Bang The Gong」からして、その分離と音の飛び出し感などのギミックをかつてないほどのキレで堪能することが出来る。
続く「Maria Club」「Don't Let Me Cry」でもしっかりと地に着いたリズムが味わえ、当時の録音の段階で十分にファットな作りであったことがよく分かる。宇都宮隆のボーカルもトラックに埋もれることなく、きれいに分離して耳に届けられる。トラックに煌びやかさを与えるギターのストロークやカッティングも、美しく鋭い。
「Self Control」はアルバム『Gift for FANKS』にも収録されているが、本アルバムに収録されているマスタリングは、アルバムとしての統一感に則ったリズミカルなサウンドが特徴的。コードとして届けられる特徴的なシンセの刻みも心地よく全体的に歯切れがよい。
この時期のTM NETWORKサウンドには欠かせない、ブラスの響きが印象的な「All-Right All-Night」においても、今回のSACD化による音質向上効果は顕著。目まぐるしく展開される間奏部分での演奏は、かつてないほどのスピード感をもって今の耳に鳴り渡る。
アルバム内の秀逸なインタールードとも言える「Fighting」「Time Passed Me By」では、たっぷりと余裕を持って演奏されているリッチさを堪能することが出来る。特に後者のコーラスワークの瑞々しさは、TM NETWORKが有していたフォーク的側面におけるその本質と本領が、この2025年のSACD化においてようやく発揮されたとも言える。
佳曲「Spanish Blue」では、冒頭のハンドクラップからしてその鮮度と響きが過去のパッケージとは大きく異なる。
大らかかつ伸びやかにアルバムの終わりへと導かせる「Fool On The Planet」「Here, There & Everywhere」では、この時代に特有な空間のリヴァーブ感が豊かに響き渡り、楽曲が持つ美しさやしなやかさを一層引き立てる仕上がりになっている。
総じて本SACDは、骨太なサウンドへと進化していったTM NETWORKの当時の充実感、その空気を十二分に引き出すことに成功したと言える。この3人がこの時代に仕掛けていたサウンドのトリックやトラップ、その伏線が今になってようやく回収されたようにも感じられた。