音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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ユーミン万歳! ~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~ / 松任谷由実 (2022 96/24)

買う予定は全くなかったのだが、Amazon Music Unlimitedで数曲試聴をしてみたところ、なかなか面白いミックスになっていたので購入。5時間近くかけて最初から最後まで聴き通した次第。

2022 Mixとなっている全収録曲は、全体的に引き算とシェイプアップで整えられていると言った印象。当初録音されていた音数を減らし、ソリッドに仕立て上げた感を受けた。

荒井由実~松任谷由実の50年の歴史を鑑みるに、今回のミックス&エディットは、現時点において必要な作業であったのだろうと。既に浸透し渡っている音源をそのままコンパイルしてリリースしたところで、既存のベスト盤との差異はそれほど多くは図られまい。かつ50年の節目であることから今回での作業、ある意味において大鉈を振るった作業は、ユーミンの楽曲に新しい印象を与えることに成功しているように思える。

特筆すべきはボーカルの明瞭さ。長いキャリアの中で、その時々の主流を作っていたユーミン楽曲では、ボーカル録音の押し引きにも特徴があった。

それを今回のアルバムの中において一つ大きな筋を通す意味もあってか、全編に渡ってボーカルが立つミックスが施されていることは、このベスト盤の存在意義を持たせる大きなインパクトを与えている。

また、ボーカルを立たせるミックスであるがゆえに、バックトラックの楽器構成に多少なりとも引き算の演出がされていることも、前述の時代の主流から今の流れへと引き寄せるための作業であったように思われる。

改めてユーミン楽曲はその旋律や歌を尊重することが根底にあり、ゆえにそれらを改めてプレゼンし直す意味も込めて今作が編纂されたのだと実感した次第。

それにしても50年と言うキャリアにおいて、ここに収録されなかった楽曲も含め、これほどまでに時代と世代を超え、世間へと広く行き渡る数多くの名曲を足跡のように残してきたことに対しユーミンと言う存在の大きさを思い知らされると同時に、それだからこそ音に新しい命を吹き込むことが必要だったのだろうと言った責任の重さのようなものまで感じさせられた。

本アルバムのタイトルこそ最初は仰々しいものに思えたのだが、実際に聴き終えてみると、いやはや万歳としか言いようがないその凄みにたじろいだのもまた事実なのだ。

ユーミン万歳! ~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~ (通常盤)(3枚組)(オリジナル特典:なし)