音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

Spectrum / 上原ひろみ (2019 SHM-SACD)

自分でも面白いことに、このアルバムを聴くにはそれなりの体力と精神力を必要としていたのです。

購入直後に聴いたものの、それ以降、何度再生させても、途中で挫折していたのです。

気が鎮まりきっている時にはこのピアノソロアルバムは神経に障り、落ち着きたいと思って聴く際にはその彩度の高さと色使いの多さにやられてリタイアするというその繰り返し。

それらのシチュエーションでは常に「そうだ、上原ひろみのソロアルバムを聴こう」と思って再生させるのですが、それでもやはりどうにもならなかったわけで。

そして今日。再生してみると、これがすっと耳に、そして身体へと音が溶け込んでいくのです。部屋がピアノの音に満たされることを潔しとしているのです。

そこで実感するのです。自分の心がこの音楽に追いつけなかったのだと。音楽が先を行き過ぎて、自分が取り残されていたのです。

上原ひろみのピアノは決して澄まし顔の音楽ではなく、かといって乱暴者のそれでもなく。そのバランスのよいポイントが、自分の心の波長と一致した時に初めて、ソロアルバムとして受容することが出来るのだと、今日になってようやく気がついた次第であります。

となると、これからもやはり再生頻度は決して高くはならない作品かもしれませんが、CDラックの中にちょこんと腰掛け、そこにいて欲しいお守りのようなものとして存在していて欲しいのであります。

Spectrum (SA-CD~SHM仕様~)(限定盤)