小宇宙だの、深淵たる音楽だの、あの手この手と言葉を使ってこの音楽を自分の中で懐柔してやろうと企んできたけれども、とどのつまり、そんな一個人の貧弱なボキャブラリーでは手に負えないほどに、ブルックナーは果てしなく格好いいのだ。
「格好いい」
その一言に尽きるよ、もう。
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その格好良さに気付かせてくれたのが、このネルソンスの指揮による演奏なのだよね。
全体像を見渡すことが困難に思えるほどの巨大な建造物の表面に施されている、克明に描かれた彫刻のようなテクスチャを見つめ、そしてそこからフォーカスを拡げて再び全体像に戻ってくるような感覚を得られるとでも言いますか。もしくはその行ったり来たりのような感覚を学ばせてもらったとでも言いますか。
そう考えてみると、それまで聴いてきた「歴史ある演奏や録音」のブルックナーとは一線を画する存在であるかのようにも思えるのだよね。
それは時間経過によるもので、自分のブルックナー経験値がある程度のところまで上がってきたところで巡り逢ったのが、たまたまネルソンスによるものだったという偶然なのかもしれないけれども、いや、偶然もまたある種の真なので、ここは素直にその巡り逢わせに感謝をするわけであります。