音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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glow / 水瀬いのり (2022 FLAC)

水瀬いのりの作品は1stから何気なく手元にあったのです。なぜなのかは自分でもよく分からないのですが。ところが完全に死蔵になっておりまして。ようやくここに来て重い腰を上げ、1stから最新作の4thまで一通り聴きました。

結論からすると、最新作の世界観が最も好みです。純粋に好きです。その前提を基にして、以下書き綴ります。

水瀬いのりの歌声は楽曲によって声を使い分ける典型的な声優的歌唱なのですが、その魅力は芯のある可憐さと瑞々しさにあると感じました。有機的なサウンド、トラックとメロディが似合う声質とでも言いましょうか。適度な柔らかさと肩の力が抜けた感覚、「フワッと感」と形容してもよい、優しい陽射しのような声が作り出す世界観に惹かれました。

その世界観が最も顕著なのが最新作であると。それまでの3作はどこか頑張ってしまっているのですよね。その力の入ってしまった元気印なボーカルスタイルは、この歳になってくると聴いていて辛いのです。それこそが典型的な声優ソングである事実も否定出来ないのですが。

そう考えてみると、1stから順を追ってリアルタイムで聴いていたとしたら途中で脱落していたに違いありません。キツい、辛い、痛い、と言った印象を持ってしまったでしょうから。他の声優ソングとの差別化も、それほど上手くは図られていなかったように思えます。

それほどまでに最新作でのこの優しさとそこはかとない切なさあるボーカルに自分は強く惹かれたのであります。楽曲も粒ぞろいで、アルバム全体としてのソフトな色彩による統一感がしっかりと図られ、それが伝わってきます。

歌で無理矢理に背中を押してもらう必要はないのです。ふとした瞬間にストンと心に入り込むような隙間を持った歌が丁度よいのです。もちろんそれは完全に主観ですがね。

その点において、この「水瀬いのり」と言う声優が生み出した隙間は本作品でこそ映えているように感じ取られるのであります。

今後もこの路線が踏襲されるのであれば、この方の存在は自分にとって気になるものであり続けるでしょう。

数年越しの宿題は、大きな成果を持ってこのように自分の前に現われてくれました。死蔵品にふと目が行く瞬間も悪くはないものです。

glow(通常盤)