昭和歌謡のオマージュとそこへのリスペクト精神あふれる、全曲、雨宮天自身の作詞作曲による5曲入りミニアルバム。
雨宮天の中にインプットされているであろう昭和歌謡の典型像が、本人の中で濾過された上で展開された、ウェルメイドな作品であると感じたられた次第。
歌詞やメロディの世界観がアレンジの妙に助けられている側面は多分にあるものの、それらが既視感を持った上で、昭和歌謡にどっぷり浸かって育ってきた聴き手である自分に届けられたのは、ある意味において当然の事であり、今作での狙いが成功していることの証明でもある。
そのアレンジからは中森明菜、杉良太郎、山本リンダ、小林明子などの往年のヒット曲を意識したと思われるフレーズがふんだんに引用されており、そのこともまた、昭和歌謡を令和の時代に演出することの巧さに繋がっているようにも見て取ることが出来た。
この世界観をより昭和歌謡色に染め上げたいのであれば、残りの要素として求められるのはボーカルの濡れ感だけであろう。女性ボーカル物の昭和歌謡が持っていた、歌を演じ上げる女優的演出がよりそれらしいものになれば、自分が期待していた作品としては満点に近いものがあるのかもしれない。
無論、作り手がそこまでは追い求めていないのであれば、本企画はなかなかに高次元なレベルで成功していると思われる。その演出は時代錯誤的なバタ臭さにも繋がりかねないために、今の時代にふさわしいものであるとは決して言えないのもまた事実なので。
今作は作品集としての1作目とのことなので、次作が近いうちにリリースされることにも期待感は高まる。5曲では物足りなく、より多くの楽曲を聴いてみたい欲が芽生える作品であった。
