先日聴いたバルトークが非常に好印象だったので、ピエール=ロラン・エマールとアーノンクール&ヨーロッパ室内管弦楽団によるベートーヴェンのピアノ協奏曲全集を図書館にて接収。
まずは第3番を聴いた。
薄氷の上にさらに薄く膜を張る水。そこを波紋を立てずに滑っていくかのような穏やかさ。時折耳の中に残されるエッジは、繊細でありながらも歯切れのよい演奏によるものか。
ベートーヴェンを聴いているはずなのに、ショパンを聴いているかのような錯覚に陥る瞬間も。
ヨーロッパ室内管弦楽団のピアノと溶け合うかのごとく演奏も素晴らしい。アーノンクールが率いる絵画的な音色の重ね方もまた美しくあり。
緊張感を持ちつつも神経質とも異なり、ここぞという場面での豪胆さ加減も毅然としている。抑揚が作為的ではなく、ストーリーとして自然に移り変わっていく。
演奏として作品を構築していく作業が、実に有機的であるとも言えるか。
一回聴いただけでは終わらせない魅力がまだまだ潜んでいるように思えるので、長い目を持って聴いていきたいと思わせる。
このように自分の耳にはまだ触れていない演奏が、世の中にはまだまだ多数存在するのだろうな。これだからクラシック音楽は沼なのだな。